三重テレビ『ゲンキみえ生き活きレポート』2022年2月20日

名古屋市出身で元・家具職人の保木正志さん(ほき・まさし)さんは、2019年に大台町の地域おこし協力隊として着任!
跡継ぎのいない老舗の和菓子店『法華堂(ほうかどう)』の事業承継を任務とし、和菓子作りを学ぶ中で、2020年に自身のブランド『奏笑堂(かなみどう)』を立ち上げました!
任期後の定住も視野に入れ、昨年秋には『和菓子カフェ かなみどう』をオープン!
地域の憩いの場、賑わいの場にしていきたいと意気込んでいます

平成12年、地域の皆さんが集まって『栗谷地域活性化を図る会』を結成し、自分たちで交流拠点を設け、さまざまなイベントを催して地域を盛り上げてきた栗谷地区。
昨年、ここに『和菓子カフェ かなみどう』がオープンしました。
地域の交流施設として建てられた『憩いの館 夢楽』を借り受け営業していたカフェが、2021年7月に閉店。
場所を引き継ぐ形で、2021年9月に販売所とカフェを備えた店舗として開業しました。

 

「季節の和菓子をご用意させていただいています。
店内で食べることも、テイクアウトのみも可能です。
また、ランチとしてカレーとキッシュなどもご用意しております。
もともとこちらにあったカフェがなくなったのを、地元の人たちが残念がって、縁あって私たちがお店を開きました。
地元の人たちも来てくれますし、SNSなどの口コミで、女子会などにもけっこう浸かっていただいています」

と、店主の保木正志さん。

 

お店のある栗谷地域から車で10分ほど。
かつて『江馬銀座(えま・ぎんざ)』と言われ、賑わいを見せた通りで100年続く菓子処『法菓堂(ほうかどう)』。
早朝、その製造工場(こうば)に保木夫妻の姿がありました。

保木さんは愛知県出身。
後継ぎのない和菓子店の事業承継を目的に、2019年、地域おこし協力隊として大台町に移住。
この作業場は、保木さんの菓子職人としての原点、そして、腕を磨く場所。
日々研究を重ね、オリジナル商品も、生まれています。

「どら焼きと、今日は桜餅と、はっさく大福と、晩白柚大福を作っています。
お客様にいろいろ楽しんでもらえるよう、季節ごとに商品を変えていたりしています」

以前から、自然の中で暮らすことを夢見ていた保木さんの前職は、なんと、家具職人。
約15年間、名古屋市でオーダー家具の製造に携わってきましたが、田舎暮らしに憧れていたことから、40歳で転職・移住を決意しました。
家具から和菓子へ。 
40歳での決断。
その転身に不安はなかったのでしょうか。

 

「やらずに後悔するよりは、やってから後悔した方がいいという性格です。
和菓子職人も家具職人も同じ職人なので、通じるところがあると思い、チャレンジしました」

と、保木さん。

「少し心配はありましたが、全く家具を作れないところから、自分で練習したり仕事をして立派なものが作れるようになった姿を見て来ました。
きっとお菓子でも同じようにコツコツ積み重ねてできるようになるという信頼があったので応援しました」

と、妻の絵里子さん。

「一番最初にお出しできるようになったのが『どら焼き』でした。
お客さんに喜んでもらえた時は本当に嬉しかったですね。
年配の方が多いですが、若い人にもやっぱり来てもらいたいので、和菓子にしてもデザートにしても、甘さをちょっと控えめにするなどの工夫をしています。
餡子が苦手な人でも、ここのだったら食べられると言ってもらえたり、餡嫌いのお子さんとかがもう一個欲しいと言ってくれると、本当に作っていて良かったと思います」

 

作業場での和菓子作りを終えたら、今度はお店での開店準備。
保木さんの初心に触れる味、『どらやき』も並びます。

 

店内の家具は、もともと使われていた座卓をテーブルに手直しし、椅子も手作りで製作しました。

「地域のお客さんが座卓よりテーブルの方がいいということで、急遽、テーブルを直し椅子を作りました。
前職がここに生きていると感じます」

 

厨房では絵里子さんがカレー作り。

「自家製で、鶏ガラスープからすべて手作りです。
遠方から和菓子を買い来られるお客さまが沢山いらっしゃるので、ちょっと休憩でお昼を食べてゆっくりしていただきたいという思いから、ランチを提供しています。
冬限定の、揚げ野菜が乗ったスープカレーと、オープン時からずっと提供している人気のバターチキンカレー、今は2種類を作っています」

 

午前11時。
山里にポツンとあるお店ですが、開店と同時にお客さんがやってきます。

「宮川どら焼きの栗を買いました。
以前からインターネットで見て気になっていたので、友だちと2人で初めて来ました。
ぜひ、また買いに来たいと思います」

 

こちらは、ちょくちょくいらっしゃる、地元のお客さん。
お味は、どうでしょう?

「美味しいよ!
若い人がお店を出してくれたっていうのはね、嬉しいですね。
なるべくみんなで利用して、盛り上げていきたいと思っています」

 

私もいただきます!
まずはやはり、和菓子ですね。
『はっさく大福』は断面が美しいですね!
はっさくがとてもジューシーで、白餡と合います!
爽やかな果汁がこの餡子に包まれてとっても美味しいです。
すっぱいのかなと思いましたが、全然そんなことありません!

「自家製の白餡を使っていまして、白餡と一緒に食べることでまろやかになるのかなと思います」

と、絵里子さん。

 

続いてはカレーを。
こちらは冬限定のスープカレーです。
スパイスが効いてるのに、とてもマイルドで食べやすいです!

「ありがとうございます。 
国内産の鶏ガラをゼロから炊いているのとかつお節の出汁を合わせています。
揚げ野菜も含め、使っている野菜は県内産のもの、それから近隣の方からわけて頂いたマイヤーレモンです。
和菓子ともとっても合うので、辛いものを食べた後に甘い物も合うようと提供しております!」

そうなんですね!
確かにカレーを食べると、和菓子を食べたくなるかも。

 

保木さん夫妻が栗谷にお店を構え、家を借りて生活を始めたのは、地域の人たちの支援があったからこそ。
店や住まいのお世話をした、ご近所の『民泊みくり』を訪ねました。  

「『和菓子カフェ かなみどう』の建物は、私たちが有志で作ったもの。
私たちの時は、みんなでする『体験型』の地域おこしでしたが、会員の高齢化が進み、活動していない状態でした。
別の方に店舗として貸し出していたところ、コロナ禍で辞められて、困っていたときに保木さんのことを聞いていたのを思い出し、お声をかけました。
小さな地域ですから、ちょっと人と会おうか、ちょっと食べに行こうか、ちょっと買いに行こうか…という場所ができたことは、とても嬉しいことです。
期待しているし、頑張って欲しいし、成功して欲しいです!」

と、『民泊みくり』の中江美春さん。

 

地域の人たちに恩返しがしたい。
保木さんが今、取り組んでいるのが、地元食材を使った新メニューの開発。
こちらは『ナリスケ大豆』。
旧宮川村で栽培されていた豆で、一旦途絶えてしまっていたが、地域住民が10年かけて栽培に取り組み、復活させました。

 

「せっかく地域の方が復活させた大豆なので、私も一役買いたいと思い、大豆を分けてもらいました。
これで台湾のスイーツ『豆花(トウファ)』を出そうと、現在試作中です」

 

「和菓子とカフェも大切ですが、さらに、もっと楽しい栗谷地区にするため、借りている敷地内にある、キャンプ場として使われていた場所の整備を計画中です。
すぐ近くにある沢では、昔ホタルが見られたとのことなので、ホタルが育つような環境にして『蛍を見られるカフェ』として、人を呼べたらいいですね。
ぜひ来て下さい!」

と、保木さん。

『和菓子カフェ かなみどう』
保木さんの和菓子でホッと一息してみませんか。